YouTube企業アカウントの始め方&運用PDCAマニュアル
2024.12.10
もくじ
企業YouTubeチャンネル設計と運用PDCA
この記事では、企業で新しくYouTubeを運用していく際の設計の仕方、運用のPDCAフローを解説していきます。
アカウント開設や、動画投稿の方法を解説している記事は多くありますが、「チャンネルを設計するには何を決めれば良いのか?」「投稿していってもそれをどうやって分析したら良いのか?」という実際の運用について詳しく解説している記事はなかなかありませんよね。
運用のための具体的ノウハウをお探しの方、外注しているけれど自社で内製化していきたい方、SNS担当になったものの運営方法にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
この記事ではYouTube運用のPDCAフローを紹介していきます。
P チャンネル設計をする
D 企画/動画撮影/編集
C アナリティクス分析
A 分析結果の言語化、次の企画へ落とし込み
P チャンネル設計
まず最も重要といえる、P(Plan)の「チャンネル設計」をしていきます。
企業アカウントの運用は、個人のアカウントの運用よりも難易度が上がります。個人のチャンネルであれば、今人気がある話題、バズっている企画、何でもありでとにかく「伸びそうなもの」を作れば良い為、需要に合わせて無限にできることがあります。
一方企業の場合は、それが「会社の宣伝」「商材の宣伝」に繋がらなければならない為、いわゆる「縛りゲー」になってしまい、できることの幅がどうしても個人に比べて狭くなってしまいます。企業チャンネルの運用には、企業チャンネルなりの正しい設計が必要です。
この設計の段階で運営が成功するかどうか9割が決まると言っても過言ではありません。以下の4フローに沿って、設計を進めましょう。
設計では、
・発信していくジャンル
・ファンになってもらうキャラクター設定
・ユーザー(視聴者)に与えられる価値
・決定したコンセプトを実際の動画に落とし込めるか?
などを細かく言語化して定義していきます。
①YouTubeニーズへの落とし込み
まず「扱っている商品/サービス」と「YouTubeというプラットフォームでの需要」の重なる所を探していく作業から始めます。
多くの企業は、この「YouTubeというプラットフォームでの需要」を無視しがちで「商品の広告」ばかりをしてしまう為、全く伸びないアカウントになってしまっています。
YouTubeは主に「暇つぶし」のためのプラットフォームです。ユーザーは「買い物」をするためにYouTubeを見ているわけではないので、広告臭が強い動画は再生されないのです。
反対に「YouTubeでの需要」に偏りすぎて、商材と全く関係のない動画が再生されても集客には繋がりにくいです。
そのため、自社の宣伝にもなる、かつYouTubeで需要がある、2つの円の重なる所をアカウントに落とし込んでいく必要があります。
では、「YouTubeで需要がある」とはどういう状態でしょうか?
YouTubeには、「一人暮らしVlog」「インテリア」「ファッション」「料理」「お金の知識」など、様々なジャンルがあります。このジャンルに人々の関心、いわゆるニーズがあるということになります。1つインテリアのチャンネルを見ると、次々にインテリア系の他のチャンネルもおすすめされるように、「この人が好きだから、この人の動画だけを見ている」というユーザーは少なく、インテリアが好きなユーザーは多くのインテリア系のチャンネルを回遊しやすい仕組みになっています。
競合が多いからそのジャンルでの発信は辞める、ではなく、ユーザーが回遊しやすいからこそ、需要のあるそのジャンルで発信していくのがYouTubeを伸ばしていくコツです。よって、企業チャンネルのジャンルを決める際には、現在YouTubeに存在しているジャンルの中で、「このジャンルであれば自社の商材と絡められそう」というジャンルを探していきましょう。これまで存在していない全くのニュージャンルでいきなり需要を生み出すのは難易度が高いからです。
どうしても今あるジャンルと商材がかけ離れている、、YouTubeで発信するのは難しそう、、という場合、別媒体での宣伝の方が効果的な場合もあります。ジャンル選定に困ったら、無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
②キャラクターを設定する
発信ジャンルが決定したら、さらに細かくチャンネルの内容を決めていきます。
まずは人(キャラクター)にファンをつけるための「キャラクター設定」をしていきましょう。
実写で人物が登場しない場合や、ナレーションのみ/テロップのみの場合でも、そのナレーション/テロップから伝わる人柄はある為、そのテロップ内容を入れているキャラクターの設定を決めていきましょう。
キャラクター設定はYouTubeチャンネルの中でとても重要な要素です。
例えば一口に「ファッション」ジャンルと言っても、どんな人が登場人物なのかによって、チャンネルの雰囲気は全く異なるものになります。
年齢や好きなファッションの系統、といったジャンルに直接関わる要素はもちろんのこと、その他の趣味や人柄なども大きく影響します。
動画のスタイルとしても、友達に話しかけるような感じなのか、日記のようにつぶやいていくのか、ファッション講義のような解説をしていくのか?などなど。細かく決めておくことで、その後の企画構成などを考えやすくなっていきます。
逆に言うと、決めずに動画を作っていくと、途中でキャラクターがブレてしまい、「結局このチャンネルで伝えたいことは何だったのか?」がどんどんずれていってしまうことにもなりかねません。
・肩書き(第三者に分かりやすいもの)
・ 経歴
・話し方
・見た目(服装など含む)
・得意、好きなこと
・チャンネルでの夢、目標
経歴や得意・好きなことなどはイメージしやすいかと思いますが、「肩書き」とはどういうことかというと、例えば「社長」や「入社3年目」「新入社員」など、初めてチャンネルを見た人が分かりやすい「社会的立ち位置」のことです。
※スーパーウルトラクリエイター、のような独特なもの、聞いてもパッとどんな役職なのか分からないものはイメージしやすいものに変更しましょう。
プライベート感のあるチャンネルにしたい場合は「〇代一人暮らしOL」などでも良いでしょう。「社会的立ち位置」をハッキリ定義しておく理由は、「この肩書の人がしているからこそ面白い」というこの後の企画作りに重要だからです。「堅い職種の人がやるからこそ意外性がある」といったフックにするため、分かりやすいものが望ましいです。
「見た目」ではメイクや服装なども決めておきましょう。スーツでカッチリしているのか、私服でラフな格好なのか、衣装を用意するのかなど、どういうコンセプトのキャラクターにしたいのか?という視点で見た目を決めておきましょう。
各項目は実際にシートに記入しながら進めていくのがおすすめです。シートを作っておけば、他のメンバーとも認識が共有しやすく、また後から何度でも振り返ることができます。
以下のサイトから、入力できるPDCAシートが無料ダウンロード可能です。ぜひご活用ください。
※このシートは、本記事で紹介している全ての工程をカバーできるようになっています。先にダウンロードしておいて、記事に沿って進めると分かりやすいです。
③チャンネル価値の定義
「価値の定義」というと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいうとそのチャンネルを見るメリットを決めておくということです。
YouTubeの動画を見るには、その動画を見る「理由」が必要です。
自分が視聴者として普段よく見ているチャンネルを思い浮かべましょう。
なぜそのチャンネルを見ているのでしょうか?どんな時に見ているでしょうか?
笑えるから見ている、〇〇な様子に癒されている、ご飯を食べながらボーっと見るのにちょうどいい、など見ている理由があるはずです。
その「視聴者が見たくなる理由」が発信者側の目線で言う「チャンネルの価値」です。
「おもしろいから」という一言だけでなく、どんなところがどんな風におもしろいのか、「どんな感情」を得たくてこのチャンネルを見るのか、視聴者にとっての「価値」を言語化しましょう。
ここがしっかりしていないと、企画内容が動画によってブレてしまったり、発信内容が独りよがりになってしまったりしまいます。
まずはターゲット視聴者(商材のターゲット)はどんな人物なのかを言語化し、そしてその人物がチャンネルに求めるものを「価値」として言語化していきましょう。
・心理的なベネフィット
・知識的なベネフィット
の2つを分けてそれぞれ考えるようにしましょう。 心理的ベネフィットは癒される、何も考えずにボーっと見られる、友人のような距離感で寂しさがまぎれる、というようなもの。 知識的なベネフィットでは出かけたくなるスポットが知れる、おいしい料理のレシピが知れる、などです。
④コンテンツのプロトタイプ作成
チャンネル価値まで決定できたら、実際に動画を作成するつもりで具体的な詳細部分のプロトタイプの作成に入っていきましょう。コンセプトがしっかりしていても、実際に動画に落とし込めなければ意味がありません。
プロトタイプでは次の項目を決めていきましょう。
・キャラクターと意外性
・基本企画
・編集テイスト
・サムネイルスタイル
・撮影場所、周辺環境など
この「キャラクターと意外性」はフックになるものを作る為の考え方です。
工程②で決めた、キャラクターの肩書きと、それに対する一般的なイメージ、そして逆にその肩書きとはかけ離れているイメージのものを考えます。
例えば肩書きを「図書館司書」とするとこんなイメージでしょうか。(あくまで例です)
社会的イメージ・していそうなこと | 1番にはイメージしないこと、意外なこと | |
図書館司書 | 物静か/物知り/控えめな服装/真面目 | 歌って踊る/おおざっぱ/攻撃的/派手/アクティブ |
YouTubeの動画は、「タイトル」と「サムネイル」だけでその動画を見たい、と思わせる必要があります。
「ん?これ何だろう?見てみたいな」と注意を引くためには意外性が必要です。「このイメージを持った人が、意外なことをしている」からこそ気になるので、①イメージしやすい肩書き、②その肩書きとはなじみがないもの の組み合わせを考えて企画を練っていくようにしましょう。
イメージしやすいもの、つまり一般的なものと、意外なもの、そのどちらもが必要です。
意外なものだけだとイメージがしづらいので、わざわざクリックして動画を確認しようという気になりません。例えば「クロアチア人が本を読んでいる」と言われても、そもそもクロアチア人に対してあまり「こんな感じだろう」というイメージが湧かない為、意外かどうかも分からない、という結果になってしまいます。
イメージしやすいものだけで企画を撮っても「図書館司書が本を読んでいる」は普通のことなので意外性がなくフックになりません。「図書館司書がギャルメイクで踊っている」など、イメージと違うことをするからこそ気になる、ということです。
イメージしやすいこと、逆にイメージしづらい意外性が作れたら、実際の企画、編集、サムネイルのテイストを決めていきましょう。
企画、サムネイルは「パッとそのタイトル、サムネイルを見て動画の内容がイメージできるかどうか」を基準に考えます。
先ほども言ったように、動画を見るかどうか判断する材料は「タイトル」と「サムネイル」しかありません。意外性があって気になる、以前に「イメージがしづらい」動画はスルーされてしまいます。知名度の低い固有名詞を入れたり、状況説明が複雑で一回聞いただけでイメージできないようなタイトルは、まず再生されないと考えましょう。
「30代男性がする〇〇」、「新入社員が〇〇する方法」、など聞いただけで動画内容がこんな感じかな?とイメージできる企画を作っていくことが重要です。
編集のテイストは、企画の種類に合わせてエンタメ風にしていくのか、ドキュメンタリーっぽくBGMなどは控えめにしていくのかなどを決めていきましょう。同ジャンルの他のチャンネルをリサーチして、似た傾向にしていくのがおすすめです。
D 投稿 スケジュール管理
ここまでの設定だけで決めるべき事柄がたくさんあったと思いますが、ここからは「Do」、つまり実際に投稿する作業になるので、決めるのは撮影、編集、投稿の頻度やスケジュールといった事柄のみになります。
投稿するためには当然撮影と編集作業が必要なので、投稿頻度から逆算してスケジュールを決めていきましょう。
撮影の進捗、編集の進捗、投稿有無を一括で管理するシートがあると便利です。
C&A アナリティクス分析
分析には、主に次の2つのアプローチがあります。1つは個別動画の分析、そしてもう1つはより長期的な分析です。
・各動画のパフォーマンスを評価
・投稿直後の伸びや結果の要因を分析
こちらはYouTube Studioを活用して、毎回動画を投稿した後にそれぞれの動画を評価しましょう。
・1ヶ月や3ヶ月などの長期間を対象
・成功した動画と失敗した動画の共通点を特定
・チャンネル全体の需要傾向を把握
動画を投稿して初期の頃は、当然再生回数も低く、動画1つを評価するにも「この動画は良かったと言えるのか」判断する材料も少ないです。
定期的に動画を投稿していくと、動画の中でも再生数に違いが出てくるので、そこでより本格的な分析ができるようになります。
伸びが良かった動画はどこが良かったのか?悪かった動画の共通点は何か?それぞれ原因を特定していくことで、チャンネル全体に何が求められているのか、需要を把握して、次以降の動画の企画に役立てていきましょう。
まとめ
チャンネル設計の時点で、「ここまで詳しく決めるのか?」というほど細部を考えておくことが重要です。
他の事業でも、狙いもなしに「なんとなく」で新規事業を作ったり広告を出したりはしないですよね。
需要をリサーチして、見込みのある場所に狙いをつける。ターゲットを定めてコンセプトを組み立てる。そういった設計があってこそ、その後の分析、微調整が可能になります。設計なしにアカウントを作るのはむしろ逆効果です。
うちの業界ではどうしたら良いか?この場合の意外性は何か?など個別の相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。