はじめに
近年SNSは重要なライフラインとなり、企業のマーケティングにも欠かせない存在になってきました。
そんな中、企業のチャンネルを運用しているけれど、なかなか効果が出ずに悩んでいる担当者もいらっしゃるかと思います。
成功例の記事はたくさんありますが、自社とは業界や商材も規模も違うし、どう参考にしたら良いか分からない…ということも多いのではないでしょうか。
成功法はジャンルによっても変わりますし、色々なパターンがあります。一方で、「やってはいけない」失敗する特徴は多くのジャンルで共通しています。
この記事では、そんな失敗してしまう企業チャンネルの特徴を解説し、それを防ぐための解決ポイントを紹介しています。また、最後にはポイントを踏まえ、成功チャンネルの例も挙げていますので、表面的な真似ではなく、ポイントを理解した上で自社の場合にも参考にできるような記事になっています。
それではやってはいけないポイントについて解説していきます。
◆専門的過ぎる
失敗してしまう企業チャンネルの特徴として、「動画で扱っているテーマや内容が専門的すぎる」というものがあります。
もちろん企業として何らかのサービスや商品を提供しているわけですから、専門的な知識はたくさん持っていることでしょう。しかし、YouTubeというプラットフォームでは「専門知識」が求められているわけではありません。
ユーザーはYouTubeを「暇つぶし」「娯楽」の為のプラットフォームとして使っています。解決したい何かを探しているわけではなく、おすすめされたものの中から、受動的にその時の気分にあったものを選んでいるわけです。
選ぶものは「単純に面白そう」や「役に立ちそう」など、自分(の興味)に関係ありそうなものです。
そんな中で、「高度な専門知識」は「自分に関係ありそう」の対極ともいえる情報です。知識が専門的になればなるほど、その知識に興味を持てる人の母数は減っていってしまいます。
知識の発信系での運営をしていくチャンネルならば、以下の2つのポイントを押さえましょう。
解決ポイント
①ノウハウ系の動画はハードルを下げて、誰でもトライできるような簡単な内容にする
②「専門知識を伝える動画」ではなく、「専門知識を使ったエンタメ動画」に昇華する
①ノウハウ系の動画はハードルを下げて、誰でもトライできるような簡単な内容にする
例えば料理教室のチャンネルを運営しているとします。
スタッフは全員管理栄養士の資格を持っていて、栄養バランスの良いレシピがその教室の強みです。
しかし、だからといって「五大栄養素とその役割について」というような動画をあげたとしても、多くの人は興味を持てないでしょう。
興味を持つのは、それこそ栄養士を目指して勉強している人くらいでしょうし、そもそもそういう人は、その教室のお客さんになりえる「ターゲット」ではないですよね><
「栄養について」語っている動画よりも、「簡単に作れる、時短レシピ」の方が需要があるわけです。
動画のメインの内容は「子供が喜ぶ〇〇レシピ」「超簡単!レンジでできちゃう〇〇〇」「30分で〇〇品作り置き」など、ハードルを下げて多くの人がターゲットになるようにしましょう。
そして、栄養についての強みや差別化は、そのレシピを紹介する中で、「ここでこの野菜を〇〇すると栄養素が逃げていきません!」などでアピールすれば良いのです。「栄養についての知識」をメインにするのではなく、レシピの中のポイントとして。まずは動画に興味を持ってもらい、再生されることが重要です。
②専門知識を紹介するのではなく、知識を使ったエンタメに昇華させること
高度な専門知識をただそのまま紹介しても、興味を持てる人は少ないです。YouTubeは勉強のためのプラットフォームではないからです。
知識系の発信でアピールしたい職種の場合は、「知識の紹介」ではなく「その知識を使ったエンタメ」に昇華させましょう。
例えばアニメや漫画のキャラクターに、法律の知識を使ってツッコミを入れていったり、ゲームの武器について物理学的に解説したりなどです。
知識そのものはマイナーだったり、普段の生活では使わないものであったとしても、その知識を一般になじみ深い物事にかけあわせることで、一気に「コンテンツ」として楽しめるものになります。
自身の扱っている仕事のジャンルが専門的すぎる、という場合はその分野そのものだけで企画を作ろうとするのではなく、その分野の知識を、一般になじみやすいもの、興味を持ちやすいものと掛け合わせてエンタメに昇華するようにしましょう。
◆内輪ネタになっている
失敗してしまう例として、動画内容が内輪ネタになってしまっているケースもよくあります。
なぜ内輪ネタになってしまうかというと、どんな人を視聴のターゲットにするのか考えず、なんとなく「おもしろそうなもの」をふわっと作ってしまっているからです。結果として、誰にも響かない動画になってしまっています。
たとえば「かっちりスーツを着て紹介してもつまらなさそう…!思い切って、堅くない動画を撮ろう!」と考える人もいますが、「堅くならない」ことが目的ではないので注意が必要です。
「堅くない」=「おもしろい」ではないからです!
堅くないように、親しみやすくなるように、といって「社員の趣味紹介」や「社内のレクリエーションイベントの様子」など、ただの日常Vlogを作っても意味がありません。
どこの誰かも分からない、一般の社会人の趣味や遊んでいるところを動画にしても、見たい!と思う人がいないからです。
再生するのは社員やその家族だけになってしまいます。
「おもしろそう」は自分たちの頭の中だけで考えるのではなく、実際に伸びている動画をリサーチしてみて、「こんな要素がある動画なら伸びそうだ」と客観的に数字を見て判断するようにしましょう。
一会社の社員の趣味紹介や「社内イベント〇〇の様子」といった動画が爆伸びしている、なんて例はないはずです。
ここで気をつけるのは、超有名大手会社の珍しい一例を参考にはしない、ということです。
誰もが知っている大手会社の社員紹介やインタビュー、有名人をゲストに呼んだイベントなどであれば、再生回数が伸びている動画もあるかもしれません。しかしそこでの伸びている理由は「イベント」や「インタビュー」そのものではなく、あくまで有名な社名や有名人であることを忘れないようにしましょう。
◆既に知っていないとたどり着けない動画
自分たちの伝えたいことだけをそのままタイトルにしてしまうのも、企業のチャンネルでやってしまいがちな失敗です。
例えばタイトル名が「商品名」だったり、「新商品〇〇の使い方」など。
新商品の宣伝する動画を作るんだから、タイトルに商品名を入れるのは当然!と思うかもしれませんが、果たして「商品名〇〇〇」というタイトルの動画を、自分なら初見でクリックするでしょうか?
そもそも新商品なら名前も知られていないわけですから、検索することもできませんし、商品名だけ聞いてもどんな商品なのかも分からなさそうです。
既に購入を検討しているお客さんが目の前にいて、その人に「こちらが商品の説明です」といって見せるような動画になってしまっていますよね。
そういう目的の為に作成している動画なら良いですが、新たな顧客にリーチしたい!という目的の場合、名前だけでは何の訴求にもなりませんし、その結果としておすすめに上がることもなければ、多くの人は動画にたどり着くことすらできません。
既に会社や商品を知っている人ではなく、初見の人がクリックしたくなるようなサムネイル、タイトルになっているか客観的に考えましょう!
「専門知識を押し出さずにハードルを下げる」にも共通することですが、とにかく視聴のハードルを下げましょう。商品の名前など、固有名詞を出すと、一気にターゲットを絞り込んでしまうことになります。新規視聴者にリーチしたいならば、伝えたいことばかり先行するのではなく、特に興味を持っていない人でも「なんだか気になるな」とつい見たくなってしまうような構成にする必要があります。
◆タイトル・サムネイルから動画内容が分からない
企業に関わらずどんなチャンネルでもやってはいけないことですが、タイトルやサムネイルを見ても、動画内容が全く分からないものもNGです。
例えば「有機野菜について」「ズバリ鉄とは」「〇〇市〇〇店の今日の様子」というようなものです。
有機野菜が何なのでしょう…?良いのか悪いのか、薦めたいのか批判したいのか、どういうスタンスの動画なのか、何も分からないですよね。
「〇〇店の様子」、というようなタイトルも多いのですが、〇〇店がどうなのかが全く伝わってきません。
ユーザーはタイトル、サムネイルから興味を持ったものを再生します。つまり、「面白そうだな」「この動画を見たらタメになりそうだな」など何らかの期待をして動画をクリックしています。
逆に言うと、どんな内容なのか全く分からないものには興味を持てません。例えるなら映画の「タイトル」しか分からない予告のようなものです。キャストも誰なのか分からないし、コメディなのか、ホラーなのか、恋愛モノなのか、ジャンルも全く分からない…!そんな映画、かなり視聴ハードルが高いですよね。面白いかどうか分からないものをわざわざ見ようとは思わないはずです。
解決ポイント
どんな内容の動画なのかサムネイル・タイトルで簡潔に伝える
例えば「〇〇はやってはいけない!」「〇〇が〇〇すぎてヤバい!」「〇〇が10倍楽しくなる〇〇!」など、その動画の結論や見所を必ず示しましょう!
そしてもちろん専門用語は使わず、誰が見てもスッと意味が分かりやすい言葉に言い換える、などの工夫も必須です。
目安として、動画内容を全く知らない第三者にタイトルとサムネイルだけを見せて、「こんな動画だと思う」と想像させることができるものが良いサムネイル・タイトルです。
「ここで〇〇なのは〇〇という意図があるから~~~」などの補足を伝えてやっと分かるようではNGです!視聴者にはタイトルサムネイルの補足説明する場所がないからですね。
◆「コラボが目的」になっている動画
「YouTubeを始めた!」となると、同業者や関係者ととにかくコラボしよう!と考え、闇雲にコラボをするケースも多いのですが、目的を決めずにとりあえず「コラボ」することはおすすめしません。
「コラボありき」で、その後お互い何をしたいか擦り合わせていく(そして特に面白くない…)というスタイルや、とりあえず対談の様子を動画にしよう!と考えていませんか?出来上がった動画は、本人たちだけが楽しそうではあるものの、そもそも視聴者は全く興味がない内容であり、関係者しか動画を再生しない、、、というパターンも多いです。
それでは撮影の費用や時間など、コストだけがかかって、結局どちらにとっても良い結果にはなりません。
解決ポイント
コラボを目的にするのではなく、目的の為にコラボをする
「コラボしたいから!」をスタートにするのではなく、まず始めはそのジャンルでの需要のある企画をリサーチしましょう。
その企画を撮るためにコラボが有効そうであるなら、そこで初めて「こんな動画を撮りたいのですがいかがでしょう?」とコラボを打診しましょう。
◆サムネイルがホームビデオ
チャンネルを見ると、ホームビデオのような見た目になってしまっているものも多いです。
動画の中をただ切り取っただけ(サムネイルを設定しておらず、自動的にYouTube側が動画内から選んだ一瞬)だったり、どの動画も社員らしき人の集合写真で、全て同じような見た目になっていたりなどです。
サムネイルは、動画を見てもらう為の唯一の入口です。いかにも「ホームビデオ感」があったり、使っているテロップのフォントが20年前のような年代を感じさせるものだと、それだけでクオリティが低く見えてしまいます。せっかく動画を投稿しているのに、クオリティが低すぎて再生されないのも非常にもったいないです。
実際に、テレビ局の公式チャンネルで動画の中身はしっかり編集されているのに、サムネイルが設定されておらず、再生数が2桁というチャンネルもあります><
(もちろん動画内の編集も重要です!)
ここで注意ですが、だからと言って「オシャレでかっこいいサムネイルが良い!」という訳でもありません。YouTubeは、ホームページやパンフレットのように、じっくりとその会社だけを見てもらえるようなものではなく、ホーム画面に様々なジャンルのおすすめが並び、その中から選ばれる必要がある媒体です。
YouTubeにはYouTubeの中での「良いサムネイル」が存在するため、伸びている動画を徹底的にリサーチする必要があります。
ジャンルや扱っているテーマによって、似たような意味でもどんなワードに引きがあるのかや、このテーマの場合はどんな画像の構成が良いのかなど、動画ごとに細かいポイントは違ってきます。また、流行の移り変わりももちろんあるので、サムネイルのリサーチは常にし続ける必要があります。
ここまで、企画の考え方やタイトル、サムネイルの「やってはいけない」注意点を紹介してきました。
どんな業種でも最低限ここは押さえておきたいポイントなので、当てはまる点はないか今一度見直してみましょう。
「うちの業種ではどんな風に企画を考えれば良いのだろう?」「専門分野の活かし方が分からない」など、さらに改善するための個別のご相談も受け付けています。
チャンネルを伸ばしていきたいと考えている方は、様々なジャンルでの実績がある株式会社仕掛人へぜひお問い合わせください。
成功している企業チャンネル
ここからは、成功している企業チャンネルの例を紹介していきます。やはり成功しているチャンネルは、上記で述べたポイントをしっかりと理解し、需要をリサーチして作られていることが分かるようになっています!
有隣堂しか知らない世界
出典元:有隣堂しか知らない世界
こちらは神奈川を中心に東京、千葉など40店舗展開している株式会社有隣堂という書店のチャンネルです。
書店という特徴を活かし、書店で販売している珍しい文具の紹介や、書店員ならではの知識を活かした企画が行われています。ただ「知識紹介」を淡々とする動画であればここまで伸びることはなかったと思われます。
熱狂的な文具オタクのバイヤーさんと、それに対して一般的な視点でツッコミを入れてくれるキャラクターのMCがいることで、マニアックな知識に対しても、視聴者が置いてきぼりになることなく楽しんで見られるようになっています。
コラボ企画も多いですが、ただとりあえず集まって対談、というような企画ではなく、見たくなる対決だったり、プロだからこそ見てみたい、気になる!と思える企画に仕上がっています。
例えば異なるチェーンの書店員同士で文具のプレゼント選び対決をしたり、文具メーカーの社長達が書店の特設コーナーを賭けて知育玩具で対決など、「専門性」を活かしたエンタメコンテンツになっています。
クリエイティブの裏側
出典元:クリエイティブの裏側
インテリアブランド「MODERN PEOPLES」の代表である崇島さんのチャンネルです。
チャンネルのサムネイルを見ると、おすすめの家具の紹介などもありますが、それよりも「〇〇するとダサくなる」や「やってはいけない〇〇」など、NG例を紹介している動画が多いことに気が付くはずです。
商品の紹介がしたい!となると「その商品をどう紹介するか?!」ばかり考えてしまいがちですが、例えば「おすすめのイス紹介」というタイトルの動画であれば、ピンポイントで今イスが欲しいと思っている人だけがターゲットになってしまいます。一方「部屋づくりで〇〇するとダサい」というようなタイトルであれば、インテリアに興味のある人や、なんとなくオシャレにしてみたいな、と思う人達全体がターゲットになり、母数がグッと広がることになります。
結果として「このチャンネルはインテリアの参考になるな」「この人がおすすめする商品なら、今度の模様替えで買ってみようかな」というユーザーが増えれば、長い目で見ると直接商品紹介の動画を出すよりもより効果的な結果に繋げることができます。
これは他の商品を販売している会社でも参考にできる考え方です。「この商品を紹介する!」よりも、もっと広いニーズとして「どんな悩みを解決できるか?」という視点で企画を考えてみましょう。
まとめ
制限なく需要に合わせられる個人チャンネルに比べ、ある程度ジャンルが限定される企業チャンネルを伸ばすには、より綿密な戦略が必要になってきます。
この記事の知識をサラッと流し読みで終わらせず、実際に運用で試しながらぜひ効果を実感してほしいと思っています!
そして、さらにこんなことを相談したい、新たな疑問が出てきた、という場合にはぜひお気軽にお問い合わせください。運営戦略の他、編集作業のご依頼も承っております。